「僕がまだ少年だった約30年前、空前のスーパーカーブームがありました。ランボルギーニカウンタックLP400、フェラーリ365GT4BBは、少年達を虜にしていました。そしてポルシェ930ターボ・・・カウンタックやフェラーリとは、まったく違うそのスタイル=筋肉質、いやグラマラスと言った方がいいのか「これでもか!」と言わんばかりに張り出したリアフェンダーに大きなリアウィング、そして何か愛嬌のあるカエルのような顔。エンジンは、カウンタックやフェラーリの甲高いV12サウンドとは全く異なり、水平対抗のバタバタした図太いサウンド。他のスーパーカーとは違うこんな930turboは、少年にとって憧れではありましたが、不思議と何か近い存在にも思えました。」
18歳で免許を取り湾岸を走っていたブラックバードさんはBMWのハルトゲに乗っていたといいます。そこで劇的に出会った某有名カークラブ会長のマルーンカラーの930turboに惹かれ、少年の時の想いが一気に爆発したという・・・。未だブラックバードさんが大学生の頃、この時ばかりはかなりの苦労を強いられて購入〜ローン返済までの道のりを歩むことになります。
「大学の放課後は部活、そして深夜から朝にかけてアルバイトの毎日、睡眠は翌日の授業中・・・喉が渇いても勿論水道水で我慢していました。すべては、930turboだけの為に。徹底した禁欲生活の4年間後に、とうとう憧れ続けた930turboを手に入れました。
貯金生活をしてなければ、大学の青春時代にもっと遊べたかも知れない。
でも、夢であった930turboを手に入れる為には何も苦にはなりませんでした。」
930turbo(カタログ上は911turboの名称)は当時ポルシェ社のフラッブシップカーです。当時のポルシェディーラーであったミツワ自動車では、930turboの車両価格1,650万、オプションをフルに付けて、税金/諸費用を入れると2,000万の車でした。そこでブラックバードさんは、また大胆な行動に出ます。なんとドイツ語の話せる友人を通し自ら個人輸入で新車を買うという事だったのです。ニアミスもあり、一度は他の国へ行ってしまった事で再オーダー。1年間待った怪我の功名で89年の最終型930turboを手に入れる事になります。
「やっとの思いで夢の930turboを手に入れた所から、本当の意味で僕の青春時代は始まった。いつでも930turboに接していたい。見ているだけでもいい・・・ハンドルを握ると、なぜかニヤニヤしてしまう・・・女性に対して以上に愛してしまっていました。勿論その思いは今でも一緒です。」
正規物より安く買えたポルシェには、長いローンが待っていたということです。それでも、その後自分の情熱を一途に投影し、新たなポルシェがリリースしても目もくれず一台のポルシェ・・・ブラックバード号をこつこつと仕上げて行くのです。改造の入門としては、まずマフラー、タービンをKKK/K27、Andialのインタークーラー、KE-Jetronics(ストックの燃料制御)のまま、ブーストアップのドッカンターボ仕様。この状態で暫く走っていたとの事です。
「ポルシェでの湾岸ランナー生活も10年が過ぎた1999年、雑誌社ネコ・パブリッシングが毎年モテギサーキットで開催している『ネコ・ヒストリック・オートモービル・フェスティバル』にて『レンシュポルトカップ』というポルシェオンリーのレース出場募集を見つけ、遊び半分でレースデビューしてみました。
感想は・・・レース、超面白い!そして、サーキットって安全に自分の車と対話できる。一方通行でエスケープゾーンも広くて湾岸よりも何倍も安全に遊べると思いました。」
翌年の2000年にアイドラーズがポルシェオンリーのイベント、「ジャパン・ポルシェディ」を初開催することになり、そしてその中で行われる930カップ(930型以前モデルのみのポルシェワンメイクレース)に初出場となります。
「アイドラーズは、アマチュアレースの中では最高峰の団体です。他の出場車両は物凄い仕様のポルシェも多く、当初『私のようなド素人が出場していいものなのか?』と戸惑いながらの出場でした。しかし、皆さん驚くほどマナーが良く、レースというよりも自分の好きな車で『かけっこ』しているような和気藹々とした雰囲気に感動して、それからはアイドラーズのレースには毎戦出場するようになりました。」
レースに出だすとやはり勝利欲が出てくると言うことで、勝つには軽量化/ブレーキ大型化/トーションバー → コイルオーバー化などもやりたくなりますが、それらをせずに湾岸時代の仕様のままでどこまでやれるか、その仕様で優勝、そしてシリーズチャンピオンを獲りたいという目標を掲げたとのこと。ですが、それは容易いことではなかったのです。930独特のドッカンターボは、サーキットではコーナー出口ではNAのように下から加速しないし、ターボが効いてきたころには次のコーナーが来てしまう・・特に雨ではまったく踏めない最悪の仕様で苦しみました。でも、そんなジャジャ馬を乗りこなすのが最高に楽しかったと語ります。私たちみたいな930turbo好きなら皆首を縦に振るのではないでしょうか。そして、ブラックバードさんはストリートが原点、普段も触れて楽しんでる愛着のある車でレースを楽しみたいということで、なんと自走でサーキットに入りレースを戦って、翌日には買い物やドライブでも使う・・・これをモットーにしたとのことです。そんな中、レースデビューして5年目の2003年3月モテギサーキットにて、大バトルの末、念願の930カップで初優勝しました。
「優勝の瞬間はヘルメットの中で号泣してしまい、ピットに戻ってもヘルメットを脱げませんでした。私のレース人生で、最高に感動した瞬間です。
そして、その2003年シリーズは他のレースも優勝して、とうとう湾岸仕様のままでの目標のシリーズチャンピオンも獲ることができて、最高の年になりました。」
しかし、翌年からは最新型のポルシェまで出場するアイドラーズ最高峰クラスのスーパーカップへのステップアップとなるので、一気に禁断の扉を開きます。
そして悩んだ末に、ブラックバード号に大幅な改造を施すことになります。内装/エアコンを外して軽量化。タービンは下から回るIHI製のF1タービンへ交換、GT選手権でGTカーが使用していた大型インタークーラー装着、エンジン内部も964t/3.6カムなど入れ、なんといってもエンジンをMoTeCのフルコンで制御したことにより、一気に550馬力仕様にまでしました。
足は、トーションバーを止めコイルオーバー化。ブレーキも大型化し、鉄板剥き出しになった車内には、溶接ロールバーを装着。
*個々の詳細についてはブラックバードさんのみんカラページをご覧下さい。
「思い切ってこの仕様にしたことにより、下から上まで綺麗に噴け上がるエンジンになり、足/ボディーのチューニングでコーナーリングスピードもアップし、古い930ターボでも最新のポルシェ達と対等近くで戦える状態になりました。」
その後、出場するレースでは自らのドライビングセンスと共に930turboの持つポテンシャルの高さを見せつけ、ついに2007年にはアイドラーズの最高峰クラスのスーパーカップでもシリーズチャンピオンを獲ることができました。
「ポルシェレースで一番悔しかったのは、2002年?のモテギサーキットでの930カップでのナイトレース。暗闇のサーキットで、トップが何回も入れ替わるデッドヒートを繰り広げ、レース終盤にトップを走っていると急にエンジン・ストップでリタイヤ・・・初優勝を逃しました。原因は、ヒューズボックス内の赤く丸いリレーが振動で緩んだだけ(!?)でした。それがわかって余計に悔しかったです。」
ブラックバードさんはツーリングやイベントにも積極的に参加する。サーキットを走っていてもやはりベースはストリートに身を置きたいと語ってます。何処へ行っても彼と彼の分身ブラックバード号は大人気です。最新のポルシェに乗っている人たちからの支持も厚い。club930turboの会長である彼ならではの発想で、イベントや交流会などをリードしています。
「実写版・湾岸ミッドナイトのブラックバード役として車が出演してから、この車は「ブラックバード号」、僕自身は「ブラックバードさん」と呼ばれるようになりました。とうとうブラックバード号と20年の付き合いになってしましたが、でもまったく飽きない・・・。このポルシェが好きで好きでたまらない・・・。この車は、生涯現役であり続けると思います。」
僕(Kero)がブラックバードさんを通して見たポルシェ像は、彼の人生同様とても憧れます。なんと言っても、ブラックバードさんには930turboのコノリーレザーの匂い立ち込める車内とキズ一つ無いピカピカのボディーの記憶が今でも鮮やかにあると言うこと。そしてそれを乗り続け、人生の半分位を一緒に生きているという点です。貴方も何処かでブラックバード号を見かけたら、是非雰囲気を確かめてみてください。19年間走り込んできた思いと彼の情熱の結晶を見てみてください。そしてきっと、誰も真似できないが、こんなポルシェ・ライフに身を置くのも悪くないと思うはずです。最後に我がメンバー会長として・・・誰よりも長く930turboを維持しているブラックバードさんに930turboプレ・会員に向けてコメントを頂きます!
「人にはいろんな車への思い、ストーリーがあります。当クラブメンバーは、年令、社会での立場、そして思い、ストーリーも様々。でも、共通することはただ一つ・・・・930turboが大好き。
このような共通の思いのメンバーが集まった場合、年令、立場などはまったく関係無くなり、垣根を越えて930turbo話に没頭し、気が付けば何時間も過ぎてしまいます(笑)。
こんな、気兼ねなく平等でお付き合いできる、930turboを愛して病まない人間が集まってこのクラブが誕生しました。
主な活動は・・・
・定例ツーリング、お夜会(ナイトプチツーリング)
・定例オフ会(食事会など)
・サーキット走行会(レース参戦及びレースサポート)
・掲示板などによる情報交換
・その他・・・
クラブの規約は、930turboを所有してること、そして930turboが好きで好きでしょうがないこと・・・。このようなクラブですが、930turboをお乗りの方は、是非お仲間にお入り下さい。club930turbo 代表 ブラックバード」 |