930ターボの歴史
開発コードネーム930 turbo・・・サイドシルエットはノーマル911とほとんど見た目は変わらない。だが、前後の大きく張り出したフェンダーやリアの大型ウイングが、リアフード下の“turbo”エンブレムを見なくても、追い越されれば瞬時に930ターボとわかる独特かつ特徴的なスタイリングだ。(文/た〜ちゃん&club930turbo)
1973年のフランクフルト・ショーで、レーシングカーさながらのスタイリングを持つターボ車がデビューした。その名も「930
turbo」・・・。奇しくももう一台同時にデビューしたターボ車はBMW2002であったが、930turboの衝撃はそれをもかき消すぐらいであったと語られている。ほとんどRS3.0と同じスタイルで2.7Lエンジンにエーベルスペヒャー製ターボチャージャーを組み込み280ps、最高速度280Km/h。
それ以後市販スポーツカーにもターボの装着が普及し、そしてポルシェは連綿と続く911ターボの歴史を刻み始めた。
市販型930ターボのお披露目は、1974年のパリ・サロンで発表された。
エンジンは76年のカレラRS3.0をベースとした930/50型、ポルシェ伝統の空冷フラット6エンジンを用い、ボッシュKジェトロに圧縮比は6.5:1と低めに設定され、ターボチャージャーはエーベルスペヒャー製に変わり、KKK製3LDZ型を装着、ブースト圧は0.77バールに設定されていた。
結果、性能はプロトタイプより少し落ちたが、260ps/35.0kgm、最高速度250km/h以上と、当時としては驚異的数字であった。トランスミッションは4段のポルシェシンクロに足廻りはΦ18前後スタビライザーに、F:独立マクファーソンストラット/トーションバー R:独立セミトレーリングアーム、トーションバーを、タイヤはF185/70/15,R215/60/15を装着していた。勿論市販車でR215/60/15を履いたのは930turboが初めてだった。*このときストーンガードは未装着だった。
1976年からF205/50/15R225/50/15のピレリP7が装着される。マフラーは左だしシングルで、インタークーラーは装着されていなかった。3リッターでも3500〜5000rpmの加速は強烈で、まさに「異次元感覚」的なものであっ
た。サーボ無しのブレーキは加速とは裏腹に効かなくて怖いものだったと池沢さとしが語っていたように、勿論フェードもしやすい。911ターボは、発表当初はタイプ名から930ターボとも呼ばれた。
1978年にエンジンのスケールアップとインタークーラーが装着された。
3.0Lから3.3Lにアップされた排気量はボアアップだけでは実現できず、ストロークもアップした。Φ97×74mm 3281cc 圧縮比は7.0:1 300ps 40kgを発生。日本仕様はサーマルリアクターがついて265ps 40.3kg。
空冷インタークーラーをエンジンフードの真下に装着した為、位置を少し上げグリルが平らな形になったリアウイングは、ラバー部に折り返しがついたデザインとなる。タコメーター内にブースト計が移動し、一番右は時計となる。
クラッチはディスクハブにラバーを組み込んだフレキシブルタイプとなり、
エンジンの位置が30mm後退した。ブレーキはブレンボが新設計したキャリパーを持つ、穴空きベンチレーテドディスクが装着された。このブレーキはレーシングカーの934にもストックで採用されたものだ。当クラブ会長曰く、2003年のレースまでコレを使い続けたがフェードしたことは一度もないという・・・。恐ろしく丈夫なブレーキと言うことは言えるだろう。
1980年〜1988年迄はマイナーチェンジが続く・・・。
1980年にはマフラーが左出しのデュアルタイプとなりオイルクーラーはフィン付きのチューブタイプとなった。
1981年には日本仕様のターボが製造中止になる。
1983年、ようやく日本仕様復活。この時日本専用触媒がつく。
1984年にはチェーンテンショナーの変更と、オルタネーターの容量アップがされ、バンパー埋め込み式のフロントフォグが採用された。また、フロント右フェンダー上にあった格納式のアンテナは取り払われ、フロントウインドウに埋め込まれるブースター付きとなる。そしてステアリングが3本スポークから、4本スポークのものへ変更になる。
1985年はサスペンションのセッティング変更を受け、フロアパンバルクヘッド周りの肉厚が0.75mmから1.0mmとなり、ボディ剛性がアップした。
1986年には新型のインパネ=エアアウトレットの大型化、シートが20mm低下し、リアタイヤが9J 245/45/16になった。
1987年にはリアリフレクターにはリアフォグが入る構造になり、リフレクターデザインも黒いPORSCHEロゴから、シルエットのみが入る洗練されたものとなった。ヘッドライトの光軸調整機構も採用された。そして、この年より世界共通触媒となり、パワーについても世界共通の設定となる。また、この年からポルシェ社では純正フラットノーズのファクトリー特注対応をしている。*カレラではこの年にG50系ミッションを搭載している。
1988年にはノンアスベストのブレーキパッドが採用され、ターボにタルガ・カブリオレが設定された。
1989年にはポルシェシンクロ4段(G930型)と決別し、ボルグワーナー製(G50型)の5段ミッションとなり、同時にクラッチは油圧作動となった。そして、驚くことに15年の長きにわたって製造され続けた、「スーパーカー時代の申し子」930turboはその幕を閉じた。しかし、我々の思いは少年のまま現役であり、930turboと共に歩んで来た道はこれからも続くであろう。
※翌年1990年turboSというグレードで出荷された幻の930ターボ
(964型ではない)が数台あるが今はその存在は定かではない。
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